日本と同じシステムを中国でも使う際の問題点と注意点

日本から新しい総経理が来た。使い慣れた本社のシステムを中国にも導入すべきだ!しかし・・・

こんなはずじゃなかった・・・

中国に赴任してみてびっくりする事。日本ではシステム化されていて、受注残や発注残、在庫管理などはシステムで検索すればすぐ解るようなっているのに、中国では担当者に聞かないと全く解らない!しかも、聞いてもすぐに回答が来ない!

こういった悩みをお持ちの総経理さんや管理者の方は多いのではないでしょうか?

「ならば中国もシステム化すればいいじゃないか!」

もちろんそうなのですが、中国にある日系企業の多くは、このシステム化の為に非常に苦労しているという実態を認識する必要が有るのです。

使い慣れたシステムを中国で使う場合の3つの問題

【日本のシステムをそのまま持ってくれば!?】

まず最初に考えるのが、使い慣れた日本のシステムを中国工場でも使おうという事だと思います。ただ、これには3つの問題が有ります。

1つは「文字」の問題です。中国語の簡体字の多くは日本語に有りません。コンピュータでいう文字コードも違います。また同じ字でも意味が違う場合もありますので、無理やり日本語の漢字に変換しただけで中国人に使わせようというのはかなり無理が有ります。

2つ目は「ライセンス」の問題です。原則的には無形であるソフトウェアにも「輸出関連法」が適用される場合があります。Microsoftをはじめ、多くのソフトメーカーは、日本で購入したライセンスを中国で使う事を認めていません。国が変わればライセンスも別購入になります。

3つ目は「OSの言語」の問題です。特に、Microsoft Accessで作られたプログラムなどは、中国語のWindowsでは動きません。開発環境によってOSの言語が変わると動かなくなることがあるのです。

つまり、日本のシステムを中国に持ってくるという発想は、環境や法律、技術的要因で使えない場合が多いのです。

中国でシステムを買う際に注意すべき事

【中国でシステムを買えば!?】

中国の日系企業がシステムを導入する方法は、大きく2つの選択肢があります。まず、日本や諸外国(米国・独国など)の中国語対応のソフトを買うこと。もう一つは、中国のメーカーから買という方法です。中国でも「用友」、「金蝶」というERP二大メーカーがあります。

しかし、日本や諸外国のERPと中国のERPでは、決定的な違いがあることをご存知でしょうか?それは「紐付き」です。

例えば日本のERPシステムの多くは、受注オーダーが無いと出荷ができません。同じように発注オーダーが無いと入荷ができません。これによって受注残や発注残をシステムが管理する為です。

これに対し中国のERPシステムは、受注が無くても出荷できるし、発注が無くても入荷できます。つまり、せっかく受注オーダーを入力しているのに、倉庫担当が該当する受注オーダーを選択せずに出荷してしまう事ができてしまうのです。

これはどういう意味かというと、システム内で受注残や発注残が管理できないという事態を招きます。要するに、中国のシステムでは、会計に必要な在庫の出入庫さえ記録しておけば良いという概念なのです。

他にも多くの違いは有りますが、要するに、業務の横の連携が不得意な中国人用に、自由度を持たせ、横の連携無しでも使えるように作られているのです。これを知らずに導入すると、管理目的で導入したシステムのはずが、管理どころか、つじつま合わせに手間が掛るという結果に陥ってしまい、その結果、ワープロとしての使い道しか無いという事にやっと気付くのです。

【日本や諸外国のシステムは?】

結果的に、管理目的でシステムを選ぶなら、日本や欧米のシステムになるのですが、これがまた大変な労力を必要とします。前記で触れたように、中国人は業務の横の連携が不得意です。「営業が受注を入力してくれないから、出荷の入力ができない!」となった場合に、日本なら、出荷担当が営業担当へ電話して、受注入力するよう頼むのが普通ですが、中国では「だから入力しなかった」で終わってしまいます。
そこを教育して、使わせるまでに大変な労力と時間を掛ける事になるのです。

【この記事は、2012/12/25「中国ビジネスヘッドライン」で配信されたものです。】