個人任せのウィルス対策。その落とし穴

中国でパソコンを買うと、何やら無償のアンチウィルスソフトが入ってきます。これってホントに安全なの?それともやっぱり日本のアンチウィルスソフトの方が安心?
会社のパソコンのウィルス管理、あなたの会社大丈夫ですか?

中国でのウィルスの危険性

日本で買ってきたパソコン。今では、日本でパソコンを買っても中国で買っても、アンチウィルスソフトはだいたいインストール済みのものが多い。ただ、日本の場合は「お試し版」が入っている場合が多く、ほとんどの場合は購入してから数日後にオンラインで購入する仕組みを取っているものが多いのに比べ、中国では完全無料のアンチウィルスソフトが入っているものが主流である。

では、中国国内で使用する場合、有料の日本で購入したソフトと、無料の中国版ソフトでは効果は同じなのだろうか?
それは、見るサイトによって感染するウィルスが違うということを知っておかなければなりません。

日本はインターネット先進国の一つです。つまり、インターネット上のサーバーはどこもある程度のウィルス対策は行っているため、一般ユーザーが感染する危険性はかなり低い環境で有るのに対し、中国ではほとんどが無防備な状態にあると思ってもよいと思います。
つまり、日本の感覚で中国のサイトを閲覧していると、あっという間にウィルスに感染してしまいます。

では、日本で感染するウィルスと、中国のウィルスの種類はどうなのでしょう?

一昔前、日本でも「トロイの木馬」系のウィルスが流行りました。しかし今ではほとんど見受ける事はありません。その代り、ウィルスと言わるもの以外のワームやスパイウェアなど、それ自体は直接悪影響を及ぼすものではく、情報漏えいの手助けをするようなものが多くなり、ユーザーは感染していることに気付かないというケースが多くなりました。

一方中国では、相変わらず直接影響を与えるウィルスがいまだに後を絶ちません。
中国市場での利用を想定した中国の無料ソフトは、このように中国国内の古いウィルスには強くできていても、世界の新種のウィルスやワーム、スパイウェアなどには適していないものも多いのです。つまり、中国のソフトは、海外のウィルスに対する免疫が無いと言っても過言ではありません。

どのようなソフトが良いのか?

では、日本で購入したソフトの方が、免疫力は高いのか?というと、これも断定はできません。逆に、中国での新種のウィルスに弱いものもあります。

日本で有名な日本製アンチウィルスソフト、トレンドマイクロ社の「ウィルスバスター」は、比較的中国の新種のウィルスには弱いと考えられます。では、海外製のシマンテックやマカフィーはというと、比較的安全な方だと思いますが、これらは同じワクチンを使っているという噂もあり、優越付け辛いということと、価格もかなり高額です。

一方中国では、瑞星、金山、江民の3社が有名であり、特に最近では、金山の「奇虎360」がシェアを伸ばしつつあります。しかし、奇虎360には、他のアンチウィルスソフトを勝手に消去してしまうという事例も上がっており、これ自体が「トロイの木馬」ではという評価もあります。

つまり「何が良い?」と言われると、各社それぞれがシェア拡大の為、何らかのユーザーが解らない範囲での裏工作をしている場合もあり、一概には言えないというのが答えです。

ただ、私自身は、正規版Windowsなら誰でも使える「Microsoft Security Essentials」を使っており、色々使った中では、邪魔にならず安全性も高いと感じており、ネット上の評価も比較的高いようです。

企業としては?

しかし、数十台のパソコンを使っている企業としてみると、全てのパソコンが同じソフトを使い、同じバージョンのワクチンを使うという事が望ましいです。
何台かはしっかり管理できていても、どれか一台が感染してしまうと、たちまち社内全体が感染してしまうからです。

残念ながらMicrosoft Security Essentialsには企業版が有りませんが、他社にはサーバーがワクチンの更新を一斉管理するような企業版ソフトがありますので、個人任せではなく、会社としてしっかりしたウィルス対策をされることを推奨します。

【この記事は、2012/10月号「香港・華南MONTHLY」に掲載されたものです。】