それで良いの?使い勝手や美しさは無視!

中国人にエクセルを使わせてみたら、ゴシック体と明朝体が混在して、見難くてしょうがない!その訳は?

エクセルで作った書式を中国人に翻訳させてみたら、ゴシック体と明朝体が混在して、非常に見難いと思ったことは無いでしょうか?
それを見て、「中国人は見た目に気を使うという事を知らんのか!」と思ったりする人もいるのではないでしょうか。確かに見た目のセンスには日本人ほどこだわらないように思えます。しかし実は、そもそもエクセルで書式を作る事に無理が有る!という事を知ってますでしょうか?

エクセルはワープロソフトではありません。表計算ソフトです。ワープロソフトと言えば、ワードが代表的です。では、エクセルとワードで、書式に関する違いが有るのでしょうか?

日本に居て、日本語ばかりの資料だけ見ていると感じる事はありませんが、Windowsの言語によって、標準フォントは異なります。Microsoft Office(以下、オフィスと言う)製品で例えると、日本語オフィスは、ワードが「MS明朝」。エクセルは「MS Pゴシック」というフォントがデフォルト(初期設定)になっています。

一方中国語オフィスは、ワードもエクセルも「宋体(SimSun)」というフォントがデフォルトになっています。

「宋体」は日本語フォントに置き換えると「明朝体」に近いもので、逆に「ゴシック体」に近いフォントは、「黑体(SimHei)」です。つまり、中国語環境のエクセルは、標準で明朝体を使っているので、日本語エクセルで作ったゴシック体の文字を、中国の簡体字に置き換えると、勝手に明朝体になってしまうのです。

オフィスに限らず、Windows上のほとんどのソフトは、日本語環境のPCで書いた文字は、日本語のフォントを採用し、その一部を中国語に変更すると、日本語に有る文字は日本語フォントをそのまま使い、日本語に無い文字(簡体字など)だけが中国語フォントに変わります。

この仕様によって、日本語フォントと中国語フォントの混在が発生し、エクセルの様に、日本語はゴシック体。中国語は明朝体という書式が勝手にできてしまうのです。

更に言えば、ワープロソフトであるワードは、一文字一文字にフォント情報が有るのに対し、もともと表計算ソフトであるエクセルは、ソフトの概念的に、データベースに近い構造で作られているので、フォントの優先度は低いのです。

つまり、もともと「印刷する」という目的で開発されていないのです。

一方ワードは、最終的に印刷を目的に作られているので、画面上で見ても、印刷物により近い状態で表示してくれるので、フォントの違いは見つけ易いよう工夫されていますが、エクセルでは、画面だけ見ていても、フォントの違いはまず見分けられません。

言い方を変えれば、エクセルで印刷目的の書類を作る事自体に無理が有ると思って下さい。その証拠に、ワードは罫線の細さを指定できるのに、エクセルでは、細線と太線しかありません。ワードは印刷を目的としたソフトであるのに対し、エクセルはデータベースを画面で見易い様に表示してくれるソフトに過ぎないのです。

もちろん几帳面な人は、一度印刷してみて、見難い所を直すという作業をする事も有ります。しかし、人間には、センスの良い人と、あまり気にしない人がいます。

私もどちらかと言うと、日本人より中国人の方が、「あまり気にしない人」が多いように感じます。しかしこれは、生まれ育った環境や性格の問題でもある為、「あまり気にしない人」を「センスの良い人」に変える事は大変です。

そうであれば、見た目の美しさを重視する書類を作らせるには、エクセルを使わずに、ワードを使わせることが手っ取り早い方法だと思います。

パソコンに限らず、間違い易いツールを使わせて細心の注意を要求するより、間違い難い方法を考えてあげることが、無駄な時間を使わないコスト意識に繋がると思います。

【この記事は、2013/3月号「香港・華南MONTHLY」に掲載されたものです。】