「パソコン使えます!」でも「エクセル使えません」

面接で「私、パソコン使えます!」と言って入って来た女子社員。
早速エクセルで資料を作らせてみたら・・・

日本には、仕事でパソコンを使う為の検定や、パソコン教室が有ります。中国でも有るには有るのでしょうが、実際の所、パソコンの操作を習得してから就職するのでは無く、就職してから覚えるという人の方が多いのではないでしょうか。

1995年にWindows 95が出回ってから、日本のビジネススタイルはすっかり変わりました。
FAXに変わりE-mailが主流になったのは言うまでもありませんが、特に日本人にとっては、Microsoft Excel(以下 「エクセル」という)の登場が仕事のスタイルを大きく変えました。

見積書や請求書の作成、一覧表の作成、写真や図を張り付けた報告書の作成など、「セル」と呼ばれる四角い枠が並んでいるエクセルの画面は、方眼紙に書き込む様な感覚で、自由自在にドキュメントを作れる画期的なものでした。

瞬く間にエクセルは、ビジネスの必須アプリケーションとなり、エクセルを使ったことが無い人はいないほど日本人のビジネスにおける必須アイテムになりました。

一方、中国では、当時個人所得が低かった中国人にとって、個人でパソコンを持っている人はまずいなく、多くは、ネットカフェなどでパソコンを使うという人が多かったことでしょう。つまり、パソコンはビジネスツールでは無く、遊びの道具の一つだった訳です。

インターネットの普及に伴い、中国のネット社会では、Tencent社が運営する「QQ」というコミュニケーションツールがシェアを伸ばして行きます。無料で会員になれ、ブログやチャットの機能を使えるQQは、短期間で中国人のユーザーを増やしていきました。

QQの普及が中国のパソコンユーザーの普及に繋がったと言っても過言は無いでしょう。

このように、ビジネスからパソコンが普及した日本と、インターネットからパソコンが普及した中国では、使うアプリケーションにも大きな差が生まれた訳です。

つまり、ネットカフェで、QQでチャットしていた人やゲームをしていた人が、それだけで「私はパソコンを使えます!」と平気で言う訳です。

日本では、パソコンを使える人=エクセルやワードを使えるビジネス寄りの人なのに対し、中国でパソコンを使える人は、必ずしもビジネスの即戦力にはならない訳です。

とは言え、少なくともQQなどで文字入力の方法は知っているはずなので、面接などで「私はパソコンを使えます!」と言う人がいたら、とりあえず文字入力はできるのだな!程度に理解しておけば良いでしょう。

日本では多くの企業が、エクセルを簡易的な管理ツールとして使っています。
例えば、売掛金の管理表や、出荷履歴などを一覧表にし、そのデータの消込をしながら管理をしています。

こういったエクセルで作られた管理表が社内にはたくさんあり、これを中国人スタッフに使わせて管理表のアップデートをさせています。

しかし、最初は良くてもだんだんとその管理表が雑になり、めちゃくちゃになったなんて経験をされた方も多いのではないでしょうか?

もともと入力規制などの設定が面倒で、自由に書き込めるエクセルでは、入力のルールをきちんと決めておかないと、全く使えないデータになってしまう可能性が高いのです。
例えば、住所の記載欄に「広東省」と入れてほしいのに、簡体字で「广东省」と入れられ、集計の時に違う名前の省として分類されたり、数字を全角文字で入れられ、計算されないなど、せっかく集計目的で作ったエクセルの管理表が目的を果たさなくなってしまう事は多く有り、その間違い探しをするのに時間を取られてしまうなんて経験はないでしょうか?

日本で使っていた管理表をそのまま中国に持ってきても、それを使い続けるというのはまず無理が有ります。エクセルの管理には限界があるという事も知っておく必要があります。

【この記事は、2013/1月号「香港・華南MONTHLY」に掲載されたものです。】