QQがビジネスに与える影響と対策

今や中国ではQQが顧客や仕入先との主な連絡手段に使われている。
でも皆さんご存じですか?QQは暗号化されていないチャットツールなんです!
QQでのやり取りは全部見られちゃうんですよ!

QQとは?

深圳の腾讯社(英語名 Tencent社)が運営している、中国最大のコミュニケーションツール「QQ」。そのユーザーは5億人を超えると言われ、パソコンを持たない人でも、ネットカフェ(網巴)や学校のPC、携帯電話やスマートフォンなどでも多く使われています。

QQは無料ソフトであり、ユーザー登録するだけで無料のE-mailアドレスも取得できることから、今や個人のチャットツールとしてだけでなく、ビジネスの場でも多く使われています。
例えば、街の小さな不動産屋などの名刺には、QQの会員番号が記載されていることも珍しくありません。またそのユーザーの年齢層も10代から30代に多く使われていることから、仕事上の情報交換ツールとしても多く使われています。

今や日本のビジネススタイルは、E-mailによる連絡手段が一般的ですが、中国ではE-mailよりもQQのチャットがビジネスツールになっていると言っても過言ではありません。

QQが情報漏えいの原因?

中国系の企業はもとより、今や日系企業でもビジネスツールとしてQQを職場で使うことを黙認している企業は少なくありません。逆にQQの利点を生かし、社内の情報伝達ツールとして活用している企業ですら多くあります。

実は、我社もその一つで、社内の情報伝達はQQで行っています。
社員全員に一斉配信したい情報や、すぐに問い合わせたい案件などが有った場合、チャットで手軽に話ができるQQは、非常に重宝します。

更に、客先や仕入先の担当者と連絡を取り合うのも、QQの方が早く、E-mailの回答を待つよりなら、QQでちょっと確認を取った方が早いのです。
しかし、もともとコンシューマ向けのお遊びツールであるQQには、多くの問題が有ります。

まず、仕事上の話をしているのか、友達と個人的にチャットしているのか区別ができない。
QQに紐付いているオンラインゲームや広告などからウィルス感染する。更にはドラッグ&ペーストで簡単にデータを転送できてしまう為、社内の電子データが外部に漏れてしまうなどの情報漏えいの問題も見逃す事はできません。Excelで管理している顧客リストや価格表などは、簡単にかつ一瞬で外部に送る事ができるのです。

意外に知らない落とし穴

更に大きな落とし穴があります。QQに似たチャットツールとしては、SkypeやMSN Messengerなど、世界的に使われているものもあります。これらのチャットツールには、基本的にデータの暗号化技術が取り込まれており、チャット相手にしか送信した内容が見られないようになっているのに対し、QQには実は暗号化技術が取り込まれていないのです。

これはTencent社が故意に暗号化をしていないというよりも、政府の指導の下で暗号化の無い仕様になっているものと思われます。その証拠に、元々は暗号化されているはずのSkypeが、中国でダウンロードすると「Skype TOM」という別のソフトとしてダウンロードされます。このSkype TOMは暗号化されていないバージョンで中国特有のソフトなのです。つまり中国では情報を暗号化せずオープンにしていないチャットツールは認められていないと言えるでしょう。

便利で使いやすいQQ。しかし、その裏では、チャットの内容や添付ファイルの内容などが、暗号化されることなくインターネット上を飛び交っているという事実を忘れてはいけません。
QQをビジネスツールとして使って行く場合は、まずはウィルス対策。そして会社の機密データなどはシステム化(Excel管理では無く、データベースで管理する)し、誰でも簡単にコピーできるような環境を防止すること。更には、インターネット監視ツールなどを導入し、誰がどのパソコンを使って、どこの相手とどんなやり取りをしているのかを監視できる仕組みを作ることが重要なのです。

【この記事は、2012/9月号「香港・華南MONTHLY」に掲載されたものです。】