中国でのIT化失敗例に学ぶ

中国に工場を持つ日系企業の多くも、ERP等のシステムを導入して業務のIT化を図っている企業が多くなって来た。
我社でも多くの顧客と取引させて頂いているが、我社に引き合いが来る新規のお客様の過去の失敗談や、我社で契約して頂きながら、導入に失敗しているお客様を見ていると、大きく分けて共通する問題が見えてくる。

1.業者選定を間違えた。
2.最初から多くの事を望み過ぎている。
3.中国人スタッフにプロジェクトを任せっぱなし。

まず、1の業者選定が一番難しい。
最悪のケースは、導入途中で業者が倒産してしまったという事例もある。
一応導入はできたが、一年後には会社が無くなっていた。なんて事例は良く聞く。
中国大手のシステム会社でも、部門毎のデータが繋がっていないシステムを「ERP」と称し堂々と販売している。結局中国系ERPを導入したが、諦めて日系に乗せ換えるという企業も多い。

次に、2の多くを望み過ぎているケースだ。
中国人は一般的にチームプレイがあまり得意では無い。
スポーツでも、サッカーや野球などのチームプレイが大事なスポーツは苦手であり、逆に単独プレイの卓球や体操などは世界でもトップクラスである。
こういう特性から見ても、工場の全部門が一丸となってプロジェクトを成功させるというような仕事はなかなかうまく進まない。

最初に「あれも、これも」と便利さだけを追求しても、最終的に横に連携が取れずに一部の機能しか使っていないという結果になり得る。

そして、3の任せっぱなしのプロジェクトも、うまくいかない事例の多くだ。
責任を認めない、人のせいにするといった習慣が、結果的に「業者が悪い」「システムが悪い」という評価を生み、先に進まなくなるのだ。

経験上、導入に成功している顧客を見ると、成功のカギが見えてくる。
それは、「人」であると私は思う。

見積もり段階から、本社のシステム部門(または業務管理部門)の方が間に入り、システムと業務のギャップを埋めてくれるキーマンをおいてくださる顧客は、間違い無く成功している。
逆に、導入途中は全く口を出さず、最終検証の時に本社から突然現れ、「ここはこう有るべきだ!」とか「普通はこうだろう!」などと、後だしじゃんけんでそれまでの経緯を覆すような人を送り込んでくる企業は、経験上必ず失敗している。

通常工場には、情報システム部の様な部門を置く余裕はない企業が多い。
しかし、基幹システムの導入には情報システム部が間に入ってくれるかくれないかで、業者側の負担も大きく変わる。

できればシステム導入が完了するまでの間、一年程度の期間で、出張ベースでも良いので、システムの方が間に入ってくれる事が望ましいが、どうしても無理な場合は、その代わりとなる人材を提供することができる業者を選定する事も大事になってくる。

【この記事は、2011/3/4「中国ビジネスヘッドライン」で配信されたものです。】