中国の商習慣に合わせた業務システム構築が必要

皆さまご無沙汰しております。今回は、実際に中国でビジネスをしてきた筆者の経験をもとに、これから中国でビジネスを考えている皆様にご参考になればと、とあるフリーペーパーに掲載した記事を一部アレンジしてご紹介します。

賄賂や未払いへの対応

弊社は2004年に事業を開始しました。今年8年目になりますが、相変わらず弊社のお客様は日系企業ばかりです。その理由は、中国企業にどのように接してよいのか解らなかったというのが本音です。

最近では、中国に進出している日系企業も数年の歳月の中、初代総経理から二代目、三代目へと代わり、それに合わせて中国人幹部に実務を任せている企業も多くなってきました。つまり日系企業ではあるが、実務は中国スタイルに変わってきている訳です。

購買、あるいは総務担当が業者から賄賂をもらう。営業マンがお客様の担当者にコミッションの話を持ちかける。財務担当が支払いを故意に遅らせる、または支払う前にクレームをつけ、賄賂を要求する。こんな事が実際に日系企業の中でも起こっています。

要するに、中国企業を相手に商売をする場合は、賄賂を想定して金額提示することも必要なのです。更に言えば、支払いを停滞した際のサービスの停止、商品の搬入停止などといった対応策を、その時々の対応ではなく、会社の仕組みとして準備しておかなければなりません。

例えば電信会社を例にすると、日本の場合は料金の未納の通知書を出し、一定期間をおいてサービスを停止するのが普通ですが、中国の場合は、予告無しに停止する場合があります。つまり機械的に遮断したとしてもそれで通る社会ですので、催促を躊躇せずに、「払わないなら止める!」という仕組みは持っておく必要があります。

中国企業相手には、中国人営業マンでなければダメです。日本人営業マンは、日系企業の日本人担当者と。中国人営業マンは、その下の実務担当者との関係維持に努めるような組織を役割分担が必要です。

中国式なローカライズも

次に考えなければならないのが、日本と中国の需要の違いです。販売しようとしている商品やサービスが中国でも受け入れられるのか。中国系同業他社ではどのように営業活動をしているのか。多くの場合、日本で売れている商品、もしくはサービスが、そのまま中国でも売れるという確証はありません。牛丼の吉野家が、日本には無い鶏丼などをメニューに加えているように、中国では中国の習慣に合ったローカライズが必要です。

例えば弊社が扱っている基幹システム(ERPなど)は、日本本社と同じものを中国にも展開しようとして失敗しているケースが多々あります。中国人は比較的個人プレイが得意で、物事を周りと協力してやることを苦手とする人が多いです。中国2大ERPメーカー(金蝶・用友)のシステムが有名ですが、これらのシステムを見ると日本では有り得ない仕組みになっている部分も見受けられます。

受注データが無いのに出荷できる。注文データが無いのに入荷できる。こういう部分は、横の繋がりが無くても運用できるように工夫されています。つまり、極端に言うと、「誰かが受注データを入力しないと出荷できない。」というシステムでは中国人の仕事のやり方にマッチしないのです。

通貨や言葉の問題で、日本のシステムを中国に持って来れないというだけでなく、こういった中国人の仕事のスタイルも考慮しなければ失敗する可能性が高いのです。

品質よりもサービス

最近は中国でもインターネットを使った通販(Eコマース)が盛んになってきました。日本では既に、Amazonや楽天などが成功を収めている分野で、中国でも「淘宝」が大きく成長しています。では、日本で通販している商品を、そのまま淘宝に出店すれば売れるのでしょうか。

答えは「ノー」です。

中国人はお店で何か買うにも、値段交渉や不良品だった場合の保証などを確認してから購入します。店員と直接話のできないインターネットの通販でも同じく、「交渉」が成立しないと買ってくれません。不良が少ない品質の良いものより、不良が有った場合にすぐに新品と交換してもらえるサービスを重視します。

そこで必要になるのが、「交渉」の場です。

淘宝のネットショップには、必ずチャットの機能があります。ユーザーはそのチャットを利用し、値段交渉や不良品の無償交換の確約を取ってから購入するというのが一般的なので、日本の様に、出店するだけでは全く売れないと思って下さい。

日本のパソコンや電化製品などは、販売店とカスタマーサポートセンターが分かれているケースが多いですが、中国では買ったところで修理や交換をしてくれないとダメなケースが多くあります。

他人に教えない中国人

最後に、中国で仕事をするに当たっての中国人の業務スタイルについてです。日本人は比較的、頼まれた事を断らないし、仕事を分担したり、次の世代の人たちを育てようとしたりします。しかし、多くの中国人はこの逆です。

自分の仕事は他人に引き継がない。教えない。その一方で他人からの依頼仕事は、例え上司からの命令でも受けない。社長の言う事しか聞かない。そういった経験が無いでしょうか?給料をもらって会社に貢献するという考え方よりも、自分のスキルを上げて、もっと高い給料をもらおうという考え方なのです。

自分のお客は自分だけのお客。自分が取得した技術は自分のもの。自分がいなくなれば会社は困る。そういう考えのもとで仕事をしているから、引き継ぎや指導ができない人が多いのです。この問題は意識改革しようと思ってもなかなかできません。

つまり会社は、担当がいなくなっても業務に支障が出ないように、システム化して情報を共有できる環境を作らなければいけないことになります。

【この記事は、2011/3/4「中国ビジネスヘッドライン」で配信されたものです。】